そして円環はひらく

ただの読んだ本メモ、人が読む用には書いていません

まだ人間じゃない・ゴールデンマン

まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集)

まだ人間じゃない (ハヤカワ文庫 SF テ 1-19 ディック傑作集)

ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫 SF テ 1-18 ディック傑作集)

ゴールデン・マン (ハヤカワ文庫 SF テ 1-18 ディック傑作集)

「まだ人間じゃない」と「ゴールデンマン」の2冊、何年前から探し求めていたか。
最近復刊されているのを知って小躍りして喜んだ。
・フヌールとの戦い
・最後の支配者
・干渉する者
・運のないゲーム
・CM地獄
・かけがえのない人造物
・小さな町
・まだ人間じゃない


表題作よりも「かけがえのない人造物」が面白かった。
火星で働いていた技術者がテラ(地球)へ戻る。
そこで男は違和感を感じる。普通の公園、いつもの自販機、でもどこかが変だ。
ホテルの部屋に持ち込んだ植物が枯れているのを見て、地球は爆撃で廃墟となっている事を知ってしまう。
見えている風景は虚像。テラの生き残りはいないのか?女性は?
皆死んだ、我々との戦いに敗れたのだと答えるプロクス人(案内人なのだ。友好的!)に男はなおも問う。犬は?猫は?
…なんと犬猫は生き延びていたのだ。手で触ると脈が伝わる。暖かい生命体。
自殺しようとしていた男は絶望を捨て希望を抱き、猫を連れて火星へ帰る。
さてここからが面白い。
精神科医のプロクス人は思う。人間とは面白い。頭では生き延びた生命体などいないと分かっているはずなのに。
地球へ赴いた地球人技術者には、それぞれに合った”シミュラクラ”が用意されているのだ。
そう、その猫は実は…


絶望を知っても頭のどこかで希望に縋りつく、人間の弱さを突いた作品。
そこが敗因だとプロクス人は言うけれど、それこそが人間の愚かしくも愛しい所だったりしてね。