森の惨劇

森の惨劇 (扶桑社ミステリー)

森の惨劇 (扶桑社ミステリー)

いつものケッチャムの勢いが萎えてる。
暴力行為がエネルギー豊かなので、いつもは逆に人間性が見えやすいけど、
なんていうか内面を素直に描く力はあまりないんじゃないか。

綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(2)

綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(2)

綾辻行人と有栖川有栖のミステリ・ジョッキー(2)

綾辻「意外な犯人」とブッツァーティ「何かが起こった」以外は初読。
ブッツァーティはやっぱり文句なし。何年経って何度読んでも好き。
でも綾辻さんの”僕だったらこう書く”というアイデア、私的には却下だな。


ー降りて振り返って列車を見て驚愕する。自分達の乗っていた列車自体が災厄だったー
降りちゃ駄目。
想像のつかない恐怖に向かって突っ込む、それから外れられない、のが醍醐味なのだから。
列車とはなんと人生に似ている事か、という作品の意図する所が生きない。
有栖川さんの方が誠実な解釈。

「親愛なるエス君へ」
面白い!拍手ー♪
素直に騙された。お手本のような綺麗な作品。

どんでん返し(ミステリ以外)

★ミステリ以外★

何と言ってもヤン・マーテル著「パイの物語」。
ただの漂流記ではない、成長物語でもない。なんとも重くて表しようのない作品。
どんでん返しというよりは、いくつかの視点から見た像を一枚に入れ直した印象。
綺麗にゲシュタルト崩壊させられる。

ビアス著「アウル・クリーク鉄橋での出来事」。もうどんでん返しとかいう話じゃない。
文学として圧倒される。

日本では、個人的に「しあわせの書」が好き。

<日本>

「GOTH」乙一
「しあわせの書」
「イニシエーションラブ」乾くるみ
「真夜中の5分前」本多
「秘密」東野圭吾
「葉桜の季節に君を想うということ」
アヒルと鴨のコインロッカー伊坂幸太郎

<海外>

「パイの物語」ヤン・マーテル
「贖罪」マキューアン
「星を継ぐもの」ホーガン
「アウル・クリーク鉄橋での出来事」アンブローズ・ビアス

どんでん返し★ミステリ寄り★

★ミステリ寄り★

私のベストはやっぱりクリスティ著「アクロイド殺し」。
何が凄いって、一見読者騙しのような作品が、実はよく読むとフェアで反則を逃れていること。
この作品のキーは途中で明かされる、一見なんてこと無い事実。
ある意味これがトリックとして一番衝撃的かも。
この重要性を読み落とすと「アンフェアだー!」となること請け合い。
ネタバレするので詳しくはこちらへ→アクロイド殺し

こちらもお薦め。デニス・ルヘイン著「シャッターアイランド」。
孤島、精神病院、謎の失踪、少女の夢、このワードだけで最後まで楽しく読める。
結末としては予想通りになるけど、大満足の作品。

そして外せないのがキャロル・オコンネル著「クリスマスに少女は還る」。
これは読後の余韻がハンパ無い。
状況が目の前に否応なく映し出される表現力に脱帽。
現場にいるかのような緊迫感で引き込まれ、最後までぐいぐい連れて行かれる。
サスペンスとしても、物語としても、どことっても文句なしの超大作。

最近読んで度肝抜かれたのがガイ・バート著「ソフィー」。

全ては語り手のフィルタにかかった昔の思い出で、読者にはチラチラと断片的にしか見せてもらえない。

それが逆に想像力を掻き立てられ、魔力的な力を持つ少年時代の世界にどっぷりと浸かる事ができる。

後書きで提示される「暗喩」の解釈を楽しむのが吉。

日本では、服部まゆみ著「この闇と光」が素晴らしい。
あまり多くは言えないけど、とにかくズドンと付き落とされる。

大好きな作家、麻耶著「夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)」。
万人にお薦めできる作家じゃないけど、欠点もある(笑)んだけど、どうしても好き。
そして個人的に一番好きなのがこれ。自分でもなんとも病的というか。

個人的にはグロ好きなので、安孫子「殺戮に至る病」もお気に入り。
事実の差し込み部分に感心しまくり。完成度高いと思う。
えーここの部分はそいうい意味だったの!?って。客観的事実を読者が勝手に違う方に取って騙されて…
思わず読み返した。

ただやっぱり海外作品の方が平均が高いかなと思う。

<日本>

「向日葵の咲かない夏」道尾秀介
クラインの壺岡嶋二人
「慟哭」貫井徳郎
「殺戮にいたる病」安孫子武丸
館シリーズ綾辻
ハサミ男」「鏡の中は日曜日」殊能
「螢」「烏」「夏と冬の奏鳴曲(ソナタ)」麻耶雄嵩
「星降り山荘の殺人」
「悪意」「容疑者Xの献身」東野圭吾
「噂」荻原浩
「倒錯シリーズ」折原一
ロートレック荘事件」
「盤上の敵」北村薫
「この闇と光」服部まゆみ

<海外>

アクロイド殺し」「検察側の証人」他多数クリスティ
「殺人交叉点」フレッド・カサック
「シャッター・アイランド」デニス・ルヘイン
「歯と爪」ビル・S・バリンジャー
「治療島」セバスチャン・フィツェック
「二壜のソース」ダンセイニ
悪童日記アゴタ・クリストフ
「さむけ」ロス・マクドナルド
「ソフィー」「体験のあと」ガイ・バート
「悪を呼ぶ少年」トライオン
「幻の女」アイリッシュ
「クリスマスに少女は還る」キャロル・オコンネル

ランゴリアーズ

大切にしてきた積読本の中の1冊。
キングの未読本が1冊減ってしまう…
(でも最近「悪霊の島」なんて面白そうな本も出たし、まだまだ現役。沢山生み出して下さい。)
ということで読み始めた。
キングを読むときって、勿論楽しませてくれるでしょう、という期待値が高くて、
いつも相当色んな物のハードルは高いんだけど。
今回、派手に降参。

「ランゴリアーズ」
飛行機の中で目覚めると、11人を残してほかの乗客が全て消えていた。
座席にはハンドバッグや財布、ピアスや指輪や歯の詰め物、そして何と手術のボルト。
一体何が起こったのか?


もう本領発揮って感じ。始めから終りまで文句なし。
スタンドのような、ITのような…。
登場人物はいつも、恐怖と、世界の終わりと、悪夢の実体と、実に誠実に戦う。
今回は予言の眼を持つダイナという女の子が登場し(スワン・ソングを思い出した)、皆を導く。
この子は短編ならでは、という運命を辿るのだけど、いじましく、寛大で、女神のよう。

時間、時空の解釈も、興をそがれる所がない。
辿り着いた空港は風もない、匂いもない、音もない、味もない。
失われていく「現在」、時間が手の平からこぼれて行く様は、砂を噛むような味の無さ。
逆に現在が追いついて来る場面は頭の中に情景が写し出され、その生の美しさは涙なしには読めない。

「秘密の窓、秘密の庭」
ある日、小説家モートの元に男が訪ねてくる。名はジョン・シューター。
南部訛りのその男は開口一番にこう言う。「あんた、おれの小説を盗んだな」
全く身に覚えがない。クレイジー族だ。と、モートは思うが、まさにその通り。
男はモートの猫を殺して鋲で打ったり、作品が収録されている雑誌のあるモートの家の書庫に火を付けたり、
顔見知りの男を殺したり、行動をエスカレートさせていく。

男の作品は「秘密の窓、秘密の庭」
モートの作品は「種蒔く季節」
モートはなんとかして雑誌を手に入れ、自分の作品が先に世に出ていた事を証明しようとするが、
どうしてもそれがかなわない。
ジョン・シューター、おまえは一体何者なんだ?


これは珍しく映画を先に見たけれど、やっぱり小説のドキドキには勝てない。
頭の中の情景が映画に影響されるのが残念なほど。面白くてたまらない。
こんな大作が2本も収録されているなんて思いもしなかった。
1個不満があるとすれば、私には最後の「キャラクターが余りにも真に迫っていて、実在の人間になってしまったんです」という一文が余計。
普通に実在したという可能性を残したくなかった、誤ってとられたくなかったんだろうけど。
親切すぎるよー
もうちょっと余韻として残しておいて欲しかったなぁ。

体験のあと

体験のあと

体験のあと

18歳で書き上げたというデビュー作。
「ソフィー」の方が洗練されていたけれど、この「体験のあと」もすごくすごく面白かった。
やばい。もっと新作じゃんじゃん書いてくれ!!

学校一の悪ガキマーティンが発案した、学校の地下室(通称「穴」)に閉じこもって3日間過ごす実験。
計画に乗った学生5人は誰にも内緒で集まり、食料を携え、穴へ入る。
酒を飲んだり話をしたり、楽しく時を過ごす5人のティーンエイジャー。
3日経ったらマーティンが開けに来てくれる約束だから何の心配もなかった。
しかし約束の3日を過ぎた所でふと不安がよぎる。
もし開けに来なかったら…?
これこそが彼の真の実験だとしたら…?


・1人称(リズの追想
・3人称(穴体験の現場)
・独白(録音テープ)

という3章が入り乱れ、視点があちこちを彷徨う。
リズの1人称の章はなんとなくぼんやりした印象で、現実味が無い。
”こどもたちが遊んでいる”等のちょっとした表現の違和感から、訝しみながら時期を探っていくが、「穴体験」の少し後の話のよう。
「穴体験」を共にしたマイクも登場し、仲良くやっている。どうやら二人は脱出できた模様。
ふーん…??と、まぁその違和感を横に置きながら、本編の「穴体験」に引き込まれ、
5人は脱出できるのか?どうやってマーティンに勝利するのか?とドキドキしながら読み進め、気付けばもうエピローグ。


ページをめくると衝撃。


もう…
この計算し尽くされていた章運びに脱帽。
ちょっとした違和感を置いて行くのも、どの程度引っ掛かりを与えるのかも。
私の違和感は、
・穴体験の現場において:男女がいる監禁現場での性描写の無さ
・リズの追想において:現実感の無さ、川の近くの家、田園風景の長閑さ
・リズとリサの名前の類似

蝿の王」と並び賞される、とあるが少し違う気がする。というか他と比べようがない。
蝿の王」と比肩する作品だなんて名誉なことなのだろうけど、ガイ・バートのためだけの賞賛句が欲しい。私にとってはそれほどの作家。
今年日本でも刊行予定だという『The Dandelion Clock』、期待大。いつ出るのかな?

黒い家

黒い家 (角川ホラー文庫)

黒い家 (角川ホラー文庫)

これが現代日本ホラーの代表なら、私はもう今の日本の作品は読まない。


・結末のクライマックスへ向かうクレッシェンドが弱い。
これは劇的な演出(包丁を持った人間が襲ってくる)からして致命的。
過激な状況の割に伝わってくる恐怖が足りないと白ける。
・指狩族というアイテムが勿体ない。もっとうまく絡めたら恐怖倍増エキスになるのに。
・犯人に関して、文集の引っ掛かりや電話の件で序盤から分かるので、
こっちだったんか!という背筋のゾクっとする感じが無い。
・床下に積み重なる死体の描写が物足りない。想像力に訴えかける力がない。


ホラー好きには到底満足できる作品では無い。
「天使の囀り」に引き続き落第点。
保険業って大変だなぁって印象だけが残った。