そして円環はひらく

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異色作家短編集「夜の旅その他の旅」

夜の旅その他の旅 (異色作家短篇集)

夜の旅その他の旅 (異色作家短篇集)

タイトルからの勝手な印象で叙情的な作品を期待してた。
なので1作品目を読んでガッカリした。が、しかし。
おおっとー!
結構面白い作品が散らばってるじゃないの。
設定をこう持ってきてこういう風にラスト落としたい、って流れがステレオタイプだなぁって感じがあるものの。


特に「鹿狩り」。上司との狩りにつき合わされた主人公。
出世を望むが、世の常に違わず妻には理解されないという一般人。
鹿が見つからずイライラする上司。
彼は焦りながら一発で仕留め損なった鹿を追いかけると、その鹿は足に銃弾を受けていた。
ぼんやりとその美しさに触れ、生命を感じる主人公。
そして、その鹿を仕留めようとする上司を止めようとしてしまう。
しかしいずれにせよその鹿はもう助からない。
撃って慈悲を与えるのか、それとも刻一刻大きくなる苦痛を味あわせるのか。
・・・なんかこの設定であのラスト、あざといよな・・・
特に上昇志向でない、ごく普通の人ってのが。
(でもこの作品が一番好きだったりする。)


あとは「越してきた夫婦」「夢と偶然と」辺りがブッツアーティぽくて好き。
「かりそめの客」「性愛教授」おバカっぽいテイストもまぁまぁアリ。
たどり着いた修道院で毎夜恐ろしい叫び声が聞こえる「叫ぶ男」、この設定大好物。


黄色い金管楽器の調べ
古典的な事件
越してきた夫婦
鹿狩り
魔術師
お父さん、なつかしいお父さん
夢と偶然と
淑女のための唄
引き金
かりそめの客
性愛教授
人里離れた死
隣人たち
叫ぶ男
夜の旅