そして円環はひらく

ただの読んだ本メモ、人が読む用には書いていません

異色作家短編集「特別料理」

特別料理 (異色作家短篇集)

特別料理 (異色作家短篇集)

「ディナーで殺人を」(アンソロジー上下巻)好きな私にとって、この人の「特別料理」は本当に特別。
読み返してやろう的気分で「特別料理」1作品目を読んで、初読の時の強烈な印象が蘇ってきた。
改めて思う、これは忘れられない逸品。


”奇妙な味わい”と言われるけど、それはダールに任せるとして、
この人は果てしなくシニカル。奇妙より皮肉。
全ての作品が綺麗だと思った。目を見張るような鮮やかさは無いけど丁寧で美しい。
地味に余韻が来た作品は「クリスマス・イヴの凶事」、
顧問弁護士がある古びた館を訪ねる。
冒頭から殆ど読み手に与えず、少しずつ事件の断片が提示され、最後の1セリフで完結。
昔は綺麗に並んでいたであろう事件の布石は、今は蹴られ、あちこちに散らばってしまっていて、
それをこの顧問弁護士が館を歩いて少しずつ拾い、読み手の前に置いてってくれる感じ。


最後の1セリフで頭の中の全ての情景が一変した。
単なる古さだけでない、何となくしっくり来なかった死に絶えた雰囲気に合点がいく。
鳥肌もん。


「特別料理」
「お先棒かつぎ」
「クリスマス・イヴの凶事」
「アブルビー氏の乱れなき世界」
「好敵手」
「君にそっくり」
「壁をへだてた目撃者」
「パーティーの夜」
「専用列車」
「決断の時」