そして円環はひらく

ただの読んだ本メモ、人が読む用には書いていません

異色作家短編集「「くじ」「ふたりの証拠」「第三の嘘」他

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

玩具修理者 (角川ホラー文庫)

何でも治してくれる玩具修理者
それは壊れたラジオでも、オモチャでも、そして弟でも…


炎天下の中、修理者の家を探して歩く場面が恐い。嫌だあの描写。


くじ (異色作家短篇集)

くじ (異色作家短篇集)

帯文句、”知らぬ間に悪魔がぼくらのあいだを歩き回っているかもしれない。”ちょっと違和感。
表題作でもある「くじ」、これは帯に合った狂気を孕んだ日常。
しかもこれ系だと私は絶対ブッツアーティのが好きだ。表題作いまいち。
全体を通して「ごくごく普通の日常を、球体のガラスを通して眺めている」雰囲気。
正面から見るとピントが合う、そこが世間に表す自分。
少し上から見ると屈折によりぶよぶよと伸びたり縮んだり、正面から見て整然と見えた部分も正体が無く醜い。
正面から見たらそれが至極全うな世間の有り様であり、隣人との会話であり、ただの歯の痛み。
しかも少し上から眺めた所で、「醜い」ものが見えたわけではなく
あくまで整然としていた部分が「見えにくく」なって醜く感じる。見えないから恐い。


「もちろん」が一番気に入った。そうでしょうね、もちろん。



北村薫のミステリー館 (新潮文庫)

北村薫のミステリー館 (新潮文庫)

この人のアンソロジー編集センスは好き。
だが、この編はそうでもなかったなー特筆すべきものは無し。
スレッサーに惹かれて買ってしもた。


ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

ふたりの証拠 (ハヤカワepi文庫)

父親の屍を踏み越えて国境を越え、離れ離れになった二人。
お婆さんの家に残った片割れ「リュカ/LUCAS」を主人公に話は進められる。
前作とは異なる一人称で語られる物語。
ヴィクトールやぺテールとの関係を楽しみつつ読み進めると、またしてもラストで頭のこんがらがる事実が。


第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

第三の嘘 (ハヤカワepi文庫)

記載された3つの嘘
:国境超えに同行していた男は父親ではない
:15歳ではない
:彼の名前はクラウスではない


全巻通して辻褄を合わせるとすると、
1巻での双子トレーニング話も2巻でのリュカの話も、クラウスと名乗っていたリュカ、彼の作り話。
現実ではないけれど、現実で有り得るような話。
(という…昔から少しずつ日記に記した話のはずだが、紙質から見ると帰国してホテルで書いた話とのこと。この辺り判断できず)
本当のリュカは幼い頃とある事件により弾丸を受け、足を悪くして施設で育った。
クラウスとは離れ離れ。
そして男を踏み台にして国境を超え、ぺテール(妻クララ)の里子になり、50年ぶりに懐かしき町へ帰ってきた。


母と妹の骸骨、これはアントニアに引き取られて妹の出来たクラウスの話か。
クラウスの過去の投影。
これを書いたのはクラウスと幼き日から接触していないリュカってのが、辻褄が合わない部分。


リュカは創作話の中の公園の老人であり、奇形のマティスであり、酒飲みの小説家である。
つらい幼少期を過ごしたリュカは虚偽の物語に慰めを得ていたのかな。


1巻2巻をたっぷり堪能した私は、あの双子の話が創作であるとは信じたくない。
あれはあれで真実。その方が良い。



太陽の黄金の林檎 (ハヤカワ文庫NV)

太陽の黄金の林檎 (ハヤカワ文庫NV)

近々公開になるサウンドオブサンダーの原作短編収録。
城壁面の細工で競い合う話と、空を飛んだ男の話。
この2話がお気に入り。


ヨッパ谷への降下 自選ファンタジー傑作集 (新潮文庫)

ヨッパ谷への降下 自選ファンタジー傑作集 (新潮文庫)

自作傑作集。
新しくはないけど、ひっさびさに読んだので殆ど忘れている物ばかりだった。
特に帯文句にもなっている「ご飯の中に社会が見えます」、これ面白いなー
こんなフレーズどうやったら思いつくんだ。