そして円環はひらく

ただの読んだ本メモ、人が読む用には書いていません

鴉


弟、襾鈴(アベル)の死の真相を知るために、残したメモを手がかりに
閉ざされた村「埜戸」を訪れる所から物語りは始まる。
そこは何故か鴉が村人を襲う異郷の地、美しい山々に囲まれた古き良き村。
しかし調査を進めるにつれ、歪みを感じるようになる。
大鏡と言う村を支配する神的存在、
人を殺めると浮かび上がるという痣、
蔵の中の人と見まがう程精巧な人形、
夜になると聞こえてくるすすり泣く声、
心躍るテイスト♪満載。


カインとアベルとか”それは分かりすぎだろ”という「気付かせる簡単な線」と
「後に絡んできそうな見えない線」が上手だと思った。
五行思想錬金術の絡ませ方も面白く、冒頭で引き込まれる文章力もあり。


ただ倒錯と眩暈のカタストロフィーが不思議なほど無いんだよなぁ…
何つか、順々と綺麗に頭が解決されていって紐解かれていく感じ。
あれは?あれ…どうしたんだっけ、という感覚も皆無。
少し前に頭を戻して咀嚼する必要も無く、それが少し物足りない。


死んだはずの橘花が千本家の騒動を知らせに来る箇所、読者が認識してきた世界が崩壊する、
あそこからの急降下はもっとゾクゾクするはず。ちょっと食い足りず。