そして円環はひらく

ただの読んだ本メモ、人が読む用には書いていません

黒衣の女、クリスマスプレゼント

黒衣の女 (ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション)

黒衣の女 (ハヤカワ文庫NV―モダンホラー・セレクション)

スーザンヒル初読。めちゃくちゃ正統派ゴシックホラー。
面白かったなぁ〜〜
うなぎ沼の館で、亡くなった老婦人の遺品整理に来た若き弁護士。
村の住民はその館の話題になると何故か顔を背ける。
亡くなった老婦人の話もしたがらない。
何が村人達を恐がらせているのか?得体の知れない霊?田舎ならではの古い言い伝え?
彼は仕事の使命感と強い心を持っているという若き自負に後押しされて館へ向かう…


老人の語りで幕を開ける本書。正統派&万人に受け入れられる味付け、でも間違いなく超一級。
調味料は馬のひづめの音、沼地から聞こえる叫び声、黒衣の女、朽ち果てた墓場。
村人が口を閉ざす本当の理由を知った時、避けようのない人生の呪いが降りかかる。
「黒衣の女を見ると子供が残酷な死に方をする」
この話を聞いた時点で遅まきながら呪縛(スイッチ)がかかったんじゃないかなぁ。
言霊というか言葉に宿る念が受け渡されたというか。ある意味口にした時点で真実になるような。
あまりに哀しく恐ろしい結末でした。


この人の他作品「ぼくはお城の王様だ」等、2002年刊行ということは文庫化する気が無いのか?
他も読みたくて探したけど、殆ど文庫が無いんですけど…


クリスマス・プレゼント (文春文庫)

クリスマス・プレゼント (文春文庫)

どんでん返し16連発の短編集。
伏線が美しく、ラストも見本のように纏まっていて中々の上玉でした。
心に残るほど衝撃の結末は無かったけど、どれも中々面白かった。
しかし物凄く読みやすい文体とストーリー展開。
一日一編ずつ味わって読むタイプじゃなくって、ガーっと一冊を流し読みしたい感じ。


ジョナサンがいない
ウィークエンダー
サービス料として
ビューティフル
身代わり
見解
三角関係
この世はすべてひとつの舞台
釣り日和
ノクターン
被包含犯罪
宛名のないカード
クリスマス・プレゼント
超越した愛
パインクリークの未亡人
ひざまずく兵士


「ジョナサンがいない」
この作品を扉に持ってきたのは大正解。短編のリズムと余韻が掴めるし、何より面白くて惹き付けられる。

「三角関係」
この人がこれやるとは知らなかったのでビックリ。
普通の短編の間に叙述物があると効果覿面だなぁ…スバラシイ。


「超越した愛」
これは初めの”彼の人間性を知る上で最初の手がかりになった”の一文がキツかった。
これじゃ取り調べてるのが分かっちゃうでしょうが。
訳もうちょっと何とかならんのか。と思った。