ランゴリアーズ

大切にしてきた積読本の中の1冊。
キングの未読本が1冊減ってしまう…
(でも最近「悪霊の島」なんて面白そうな本も出たし、まだまだ現役。沢山生み出して下さい。)
ということで読み始めた。
キングを読むときって、勿論楽しませてくれるでしょう、という期待値が高くて、
いつも相当色んな物のハードルは高いんだけど。
今回、派手に降参。

「ランゴリアーズ」
飛行機の中で目覚めると、11人を残してほかの乗客が全て消えていた。
座席にはハンドバッグや財布、ピアスや指輪や歯の詰め物、そして何と手術のボルト。
一体何が起こったのか?


もう本領発揮って感じ。始めから終りまで文句なし。
スタンドのような、ITのような…。
登場人物はいつも、恐怖と、世界の終わりと、悪夢の実体と、実に誠実に戦う。
今回は予言の眼を持つダイナという女の子が登場し(スワン・ソングを思い出した)、皆を導く。
この子は短編ならでは、という運命を辿るのだけど、いじましく、寛大で、女神のよう。

時間、時空の解釈も、興をそがれる所がない。
辿り着いた空港は風もない、匂いもない、音もない、味もない。
失われていく「現在」、時間が手の平からこぼれて行く様は、砂を噛むような味の無さ。
逆に現在が追いついて来る場面は頭の中に情景が写し出され、その生の美しさは涙なしには読めない。

「秘密の窓、秘密の庭」
ある日、小説家モートの元に男が訪ねてくる。名はジョン・シューター。
南部訛りのその男は開口一番にこう言う。「あんた、おれの小説を盗んだな」
全く身に覚えがない。クレイジー族だ。と、モートは思うが、まさにその通り。
男はモートの猫を殺して鋲で打ったり、作品が収録されている雑誌のあるモートの家の書庫に火を付けたり、
顔見知りの男を殺したり、行動をエスカレートさせていく。

男の作品は「秘密の窓、秘密の庭」
モートの作品は「種蒔く季節」
モートはなんとかして雑誌を手に入れ、自分の作品が先に世に出ていた事を証明しようとするが、
どうしてもそれがかなわない。
ジョン・シューター、おまえは一体何者なんだ?


これは珍しく映画を先に見たけれど、やっぱり小説のドキドキには勝てない。
頭の中の情景が映画に影響されるのが残念なほど。面白くてたまらない。
こんな大作が2本も収録されているなんて思いもしなかった。
1個不満があるとすれば、私には最後の「キャラクターが余りにも真に迫っていて、実在の人間になってしまったんです」という一文が余計。
普通に実在したという可能性を残したくなかった、誤ってとられたくなかったんだろうけど。
親切すぎるよー
もうちょっと余韻として残しておいて欲しかったなぁ。