そして円環はひらく

ただの読んだ本メモ、人が読む用には書いていません

体験のあと

体験のあと

体験のあと

18歳で書き上げたというデビュー作。
「ソフィー」の方が洗練されていたけれど、この「体験のあと」もすごくすごく面白かった。
やばい。もっと新作じゃんじゃん書いてくれ!!

学校一の悪ガキマーティンが発案した、学校の地下室(通称「穴」)に閉じこもって3日間過ごす実験。
計画に乗った学生5人は誰にも内緒で集まり、食料を携え、穴へ入る。
酒を飲んだり話をしたり、楽しく時を過ごす5人のティーンエイジャー。
3日経ったらマーティンが開けに来てくれる約束だから何の心配もなかった。
しかし約束の3日を過ぎた所でふと不安がよぎる。
もし開けに来なかったら…?
これこそが彼の真の実験だとしたら…?


・1人称(リズの追想
・3人称(穴体験の現場)
・独白(録音テープ)

という3章が入り乱れ、視点があちこちを彷徨う。
リズの1人称の章はなんとなくぼんやりした印象で、現実味が無い。
”こどもたちが遊んでいる”等のちょっとした表現の違和感から、訝しみながら時期を探っていくが、「穴体験」の少し後の話のよう。
「穴体験」を共にしたマイクも登場し、仲良くやっている。どうやら二人は脱出できた模様。
ふーん…??と、まぁその違和感を横に置きながら、本編の「穴体験」に引き込まれ、
5人は脱出できるのか?どうやってマーティンに勝利するのか?とドキドキしながら読み進め、気付けばもうエピローグ。


ページをめくると衝撃。


もう…
この計算し尽くされていた章運びに脱帽。
ちょっとした違和感を置いて行くのも、どの程度引っ掛かりを与えるのかも。
私の違和感は、
・穴体験の現場において:男女がいる監禁現場での性描写の無さ
・リズの追想において:現実感の無さ、川の近くの家、田園風景の長閑さ
・リズとリサの名前の類似

蝿の王」と並び賞される、とあるが少し違う気がする。というか他と比べようがない。
蝿の王」と比肩する作品だなんて名誉なことなのだろうけど、ガイ・バートのためだけの賞賛句が欲しい。私にとってはそれほどの作家。
今年日本でも刊行予定だという『The Dandelion Clock』、期待大。いつ出るのかな?