そして円環はひらく

ただの読んだ本メモ、人が読む用には書いていません

ソフィー

面白い!!魔術的な力に満ちた幻想小説。「ずっとお城に暮らしている」や「蝿の王」、「悪を呼ぶ少年」、「悪童日記」を思い出した。
良く把握できない点がいくつかあって、その余韻に引っ張られる。あの世界にまた行きたくなる。
解説で挙げられていた3点の”暗喩”の解釈、以下ネタバレ。
・春休み中、しかも姉の誕生日のすぐ後に弟の誕生日を設定した点
アンモナイトに興味を持った点
・日記をあの場所へ隠した点

アンモナイトは、最後のソフィーの死に効かせるため。
赤と言うよりは黒に見えるコート、それを着てくぼみで丸まっているソフィーはアンモナイトを暗喩している。
アンモナイトはマシューにとってどんなものだったか?
…唯一の少年時代の宝物。
…「もうこれは卒業よね」というソフィーの言葉。

→日記をあの場所へ隠したのは、自分の死に誘導するため?

→春休み中に歳をとる設定、姉の誕生日のすぐ後の弟の誕生日の意味?
二人の楽園の中で成長してきた。他の誰にも知られず歳をひとつずつ重ね、誕生を祝う存在はお互いだけという意味付け。
姉のすぐあとの誕生日の意味に関してはよく分からない。


まだまだ謎な点
・囚われていた彼女は、洞窟に閉じ込められたのか?それとも唯一助かったのか?
→パニックを抑える描写や、沢山のソフィーのもつ灰色の鍵を毎日毎日試したという記述、
「時間はたくさんあるのだから」という言葉から察すると、今までのソフィー同様閉じ込められたと考えられる?


・悪夢に現れる”グレディー爺さん”の正体は?
→「あの女がマシューを脅かすのを止めなければ」というソフィーの日記の記述から、母がグレディー爺さん?
それともソフィーか?
何らかの理由があってコートを着て顔を隠した事が、結果的に脅かす事になったのだと思うのだけど、
脅かすことが行動意味だとすると…ちょっとしっくり来ない。
母だとすると、何らかの方法でソフィーは母と対峙し勝った。それは母と娘の力関係からも分かる。
そして退治したはずのグレディー爺さんがまだ、夢でマシューを苦しめていると知り、焦った…
ソフィーにとって全ては完璧に成功していないと駄目なのだ。


・最後、母を自殺に追い込むためにソフィーは母に何を言ったのか?
→赤ん坊を殺したのは自分だと言った?
でも何故マシューは庇護すべき存在で、その下の弟は排除すべき存在?


全ては語り手(マシュー)のフィルタにかかった昔の思い出で、読者には日記ですらチラチラと断片的にしか見せてもらえない。
囚われていた彼女と同じように、私たちには出来事は明らかになってもどんな状況だったのかが分からない。
それが逆に想像力を掻き立てられ、魔力的な力を持つ少年時代の世界にどっぷりと浸かる事ができる。
ピントが合わずもやがかかっているようで細部は妙にはっきりしている、草木の匂いや秘密の隠れ家。
成長が楽園を崩壊させ、二人はそれぞれ違った方法でそれに抵抗した。


著者の意図が同一ソフィーとして読ませることにあったなら、囚われているソフィーがソフィーじゃない土台で読み進めた私とはまた違った読後感になるのか。気になる。