向日葵の咲かない夏
- 作者: 道尾秀介
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2008/07/29
- メディア: 文庫
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ある夏の日、学校を休んでいるクラスメイトの家にプリントを届けに行ったミチオ。
何とその家で首吊り自殺をして天井からぶら下がっているクラスメイトを目撃してしまう。
学校へ戻って慌てて報告し、警官と共に家へ行くと、何と…死体が無くなっていた。僕は確かに見たのに。
調べると殺害の後やロープの跡が見つかったものの、殺人なのか自殺なのか分からず事件は暗礁に乗り上げる。
そして数日後、クラスメイトは蜘蛛となって僕の目の前に現れた。
自分を殺した犯人と、無くなった体を探してほしいと言う。
僕と妹は、蜘蛛と共に事件の真相を追いかけるが…
<ネタバレあり>
言ってしまえば二番煎じの叙述トリック。
主人公の脳内ファンタジーに読者が付き合うのは、”主人公が自分に嘘を付く””自分を騙す”事がOKになるから
好きなようにやりやすいんだろう。フェアではある。
感想としては、ファンタジーの方が皮肉にも鮮やかで現実味があると面白い。これは好みの問題だけど。
(服部まゆみさんの「この光と闇」)
この著者のはじわ〜〜っと現実が滲み出すような感じ。現実かファンタジーか分からないような浮遊感や眩暈はない。
伏線に関して言えば稚拙。違和感の置き方が初心者向け。
まず妹の違和感。序章の”僕の膝で息をひきとった”で人間じゃないって分かってしまう。
次に、母親が接する”妹”と僕が接する”妹”の違い。感触が別なので2個体あると推測。
母親の方は無機質な感触(化粧なども出来る事)からプラスチックの玩具か人形だと思った。
これは当り。で、僕の方は途中の伏線(外へ連れ出せる事や先生が二度見てもスルー出来る事)から猫だと思った。
胎児=トカゲの連想は子供らしくて納得だけど、先生のくだりで「さっき見たミカと今のミカが同じと思わなかったんだろう」
というのが生きない。
玄関の植木鉢は大したキーじゃないのに、ご親切に伏線として引っ掛かるように書いてくれている。所々惜しいと思う。