天使のナイフ
- 作者: 薬丸岳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2008/08/12
- メディア: 文庫
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文末の文字を何度直そうと思ったか。ーた。ーだ。が多すぎて文章が流れない。
言った、見た、思ったって小学生の読書感想文じゃないんだから。
リズムが悪い上さらに流れを止めるような間違いも多いし…P44「思う」→「思った」
内容としては一つの事件を紐解いていく中で、今まで隠れていた事件が繋がって一つになるという作品。
読んでいる間は楽しいが、読み終わって自分の中で全体像を見たときにさて、どうか。
私は合格点は出せない。
あの時○○がなければ、●●は起こらなかったのに→●●がなければ△△は起こらなかったのに→
というまさにドミノ倒しの事件の連鎖なんだけど、
それぞれの○○や●●が出来事として大きすぎる。
1人の女性に絡む殺人が3つ。波乱万丈。
テーマはこれでもかという程前面に押し出されていて、作者の気合は分かるけど、どうしても訴えかけがしつこい。
「被害者を無視して真の更生などありえないのに」
今まで構築してきたキャラを無視してでも貫井の口から言わせたかったのか。
”少年法と被害者救済”のテーマごり押し作品。
もう一度読みたい宮沢賢治
- 作者: 宮沢賢治
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2007/08
- メディア: ムック
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・銀河鉄道の夜
小学生の時読んだけど毛一筋も理解出来てなかったな…
この話嫌いだった。その理由が分かった。
もう2度と読みたくないなぁ。精神的にしんどい。
・注文の多い料理店
迷い込んで山奥で見つけた西洋造りの料理店。空腹の紳士二人。
入ってみると不思議な張り紙が次々と出てくる。
「髪を梳かして靴の泥を落として下さい」
「帽子、靴をお取り下さい」
「ネクタイピンをお取り下さい」
素直に従う呑気な主人公達に読者はヤキモキ、ドキドキ。
「壺のクリームを塗って下さい」
嫌な予感!!
ページを捲る手が早まり、結末へクレッシェンドのかかる中、
「クリームをよく塗りましたか、耳にもよく塗りましたか」
と、置かれているのは小さなクリームの壺。
一生懸命、耳に塗る男二人。
…プッ。
この緊張と緩和。たまらない…
小さい頃、何度も何度も繰り返し読んだ「よだかの星」や、
文字を追うだけで楽しい、全編が詩の様な「やまなし」も入っている。満足の1冊。
運命のボタン
- 作者: リチャード・マシスン,尾之上浩司,伊藤典夫・尾之上浩司
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2010/03/26
- メディア: 文庫
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「運命のボタン」
ある日自宅にボタンが届けられた。
「このボタンを押せば大金が手に入る。しかし世界のどこかで知らない誰かが死ぬ」
あなたは押すか?押さないか?
なんかオチ直前までは結局「猿の手」みたいだと思ってたけど、最後の男の一言で一変。
読後はなかなか良い感触。
「死の部屋のなかで」
ふらりと立ち寄った喫茶店。水はまずいしメニューはろくなものがない。店主は無愛想でどことなく上の空。
まぁいいやと注文してトイレから戻ると、夫が煙のように消えていた。
どどどどうなってんの!?…と思いきや、現実的な解答が与えられて大団円。
もっと長くても良いなぁ。
そしてもちょっとキメ細やかな描写力があれば、妻と一緒に不可解な世界に入り込めるのになぁ。
外から眺めている感じで、ちょっと残念。
「帰還」
「奇蹟の輝き」「ある日どこかで」に共通するような郷愁SF。
MAZE
- 作者: 恩田陸
- 出版社/メーカー: 双葉社
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入口は人ひとりがようやく通れる位の狭さで、いったん中に入ると人間は消えてしまう。
その建築物は通称”豆腐”。
誰が何の目的で作ったのか?なぜ入口はひとつなのか。人間消失のルールとは?
提示される謎は面白くて心を引き付けられる。が、この手の話の宿命とはいえ、作者が提示する”解”が肩すかし。
結末を曖昧にして読者に投げなかったのは作者の意地か。
星新一の「穴」を出して、”豆腐”に辿り着くまでの細い道もその荒野も大きな”豆腐”なのではないか、
という読者の足元をぐらつかせる様な感じは惜しい。
告白
- 作者: 湊かなえ
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2010/04/08
- メディア: 文庫
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本屋大賞も不思議なラインナップになってきた。一般認知され、本好きの手から離れだ結果か。
第1章の「聖職者」は綺麗にまとまっていて、短篇として読むなら鮮やかでインパクトがあり、
転結も効いているから満足度は相当高かった。
でもその後を繋げて事件を一つの輪として見るなら、多角的な視点はもとより事件と心理の掘り下げが圧倒的に足りない。
人間の暗いところを突かざるを得ない命題を背負っているのに、
死に直面した時の感情の扱い方が軽い事に嫌悪感を感じる。
「死、死、死…」とか。
このような軽さが後味の悪さにリンクするのでは。
いっそのことバトロワのようにエンタメ作品にすればまだマシだった。
救いのないリアリティさを得られる筆力は無い。つまりこの結末を書く筆力は無い。
エンタテイメントとしての楽しませ方は巧いので、結構映画向きなのでは。